慢性疾患
- 慢性疾患は入院時点以前の状態であり、例えば心不全で ICU に入室したとしても、今回の入院以前の状態が NYHA IV 度でなければ心不全は選択されない。
- また、もともと呼吸不全はないが、前医で肺炎に対して気管挿管され、転院直入でICU に入室した場合は、ICU 入室時点では人工呼吸器を使用しているが、今回の肺炎発症以前には呼吸不全ではないため、呼吸不全は選択されない。心不全や免疫抑制についても同様である。
- ステロイド内服中の患者すべてで免疫抑制が“Yes”になるわけではなく、プレドニゾロン換算で 0.375mg/kg/日以上の場合に“Yes”となる。
- 転移性肺腫瘍や転移性肝腫瘍などの術後で、ICU 入室時には転移巣や原発巣が除去されていても、これらの場合には癌転移は“Yes”を選択する。
疾患名 | スコア | 定義 |
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AIDS | II, III, S | HIV 陽性で、AIDS の定義を満たす合併症がある。 |
心不全 | II | NYHA IV:安静時もしくは非常に軽度の労作で症状が出現。 |
呼吸不全 | II | 証明された慢性の低酸素、高二酸化炭素、二次性多血症、重度の 肺高血圧、人工呼吸器依存。 |
肝不全 | II, III | 下記の肝硬変があり、かつ黄疸/腹水/上部消化管出血/肝性脳 症の既往がある。 |
肝硬変 | II, III | 肝硬変になる原因があって門脈圧亢進症状(食道静脈瘤など)が あるか、生検にて証明されている。 機能している移植肝を持っている場合は含まない。 |
白血病/ 多発性骨髄腫 | II, III, S | 過去5年以内の既往。 白血病は急性/慢性、骨髄性/リンパ性を問わない。 |
リンパ腫 | II, III, S | 過去5年以内の既往。 |
癌転移 | II, III, S | 固形癌の遠隔転移。所属リンパ節や浸潤は含まれない。 |
免疫抑制 | II, III | 6ヶ月以内に以下の治療を受けている:免疫抑制剤/化学療法/ 放射線療法/ステロイド(プレドニゾロン換算で 0.375mg/kg/日 以上)。 |
維持透析 | II | 血液透析もしくは腹膜透析が3ヶ月以上前から導入。 |
II: APACHE II, III: APACHE III, S: SAPS II.
APACHE II には AIDS、白血病/多発性骨髄腫、リンパ腫、癌転移という項目はないが、免疫抑制の定義に含まれると考えられるため、これらの項目に II を記載している。
APACHE II と APACHE III の肝不全の定義には若干の差異があり、また APACHEIII では肝硬変も追加されている。そのため、肝不全の定義は APACHE III のものを用い、肝硬変も APACHE II の肝不全の定義に含めている。