2022年 日本集中治療医学会 学術集会
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名前
内田 雅俊(うちだ まさとし) -
所属(施設名と部門名)
獨協医科大学 救急医学講座 -
発表タイトル
JIPAD update 2022 -
抄録
Japanese Intensive care PAtient Database(JIPAD)は2014年に開始された日本集中治療医学会が運営する診療データベースである。集中治療室に入室した患者の疾病や重症度、入室の経路、集中治療室における治療内容、そしてその転帰といった医療情報を収集し、各施設間での比較を行うことによって、医療の質の向上および集中治療医学の発展をめざすことを目的としている。2021年12月時点で91の施設が症例登録を行っており、登録症例数は約24万件となっている。2015年度から各施設へベンチマーキングを目的とした情報を提供する年次レポートを配布しており、最新版である2020年度年次レポートでは70施設が参加予定である。本発表で概略を報告する。2021年4月にWEB上で閲覧できるインタラクティブレポートをリリースした。インタラクティブレポートでは年齢、疾患群などのサブグループを自由に設定して他施設との重症度スコアや予後の比較ができ、これまでの年次レポートよりも詳細なベンチマーキングが可能となる。2021年7月から日本版死亡予測モデル(Japan Risk of Death: JROD)がJIPADで利用可能となった。JRODではAPACHEIII-jなどの既存の重症度スコアが死亡を過大評価していた問題を解決するために予測モデルのアップデートが行われており、従来の重症度スコアを用いるよりも正確な診療の質の評価が可能である。2020年2月から研究などを目的としたデータの二次利用が可能となり、2021年11月までで30のデータ利用申請をいただき、複数の研究が論文化されている。利用申請は随時受け付けている。今後も診療の改善や研究につながるコンテンツの提供をしていく予定であり、多くの施設の参加をお願いしたい。 -
発表資料
ファイル「1 内野雅俊.pdf」
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名前
大邉 寛幸(おおべ ひろゆき) -
所属(施設名と部門名)
東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学・経済学分野 -
発表タイトル
JIPADとCOVID-19 -
抄録:
【目的】日本の多施設ICUレジストリーであるJIPADに入院したCOVID-19患者の特徴や転帰を記述することを目的とした。
【方法】日本集中治療医学会の運営する前向き症例登録事業のJIPAD(日本ICU患者データベース、JapaneseIntensive care PAtientDatabase)データベースを用いたコホート研究を実施した。2020年1月1日から2021年2月28日までに、JIPADデータベースでCOVID-19と診断されてICUに入院した16歳以上の患者を対象とした。主要評価項目である院内死亡率を年齢とICU滞在中の臓器補助療法で層別化して記述した。
【成績】合計451人のCOVID-19患者が同定された。年齢の中央値は68歳(四分位:58-74歳)で、104/451(23.1%)が女性であった。ICU入室後24時間以内のAPACHE II、APACHEIII、SAPS II、SOFAスコアの中央値は、それぞれ16(13-21)、61(46-80)、38(29-46)、6(4-8)であった。ICU入室後24時間以内に、304/451例(67.4%)の患者が人工呼吸管理を受けた。全体の院内死亡率は70/451例(15.5%)であった。16-54歳、55-64歳、65-74歳、75歳以上の患者の院内死亡率は、それぞれ3/86(3.5%)、6/96(6.2%)、35/164(21.3%)、26/105(24.8%)であった。ICU滞在中に人工呼吸管理、腎代替療法、ECMOを必要とした患者の数は、それぞれ331/451(73.4%)、62/451(13.7%)、41/451(9.1%)であった。ICU滞在中に人工呼吸管理を行わなかった患者、人工呼吸管理のみを行った患者、人工呼吸管理と腎代替療法の両方を行った患者、ECMOを行った患者の院内死亡率は、それぞれ13/119(10.9%)、29/253(11.5%)、16/38(42.1%)、12/41(29.3%)であった。
【結論】他国の多施設ICU研究の結果と比較して、本研究のICUに入院したCOVID-19患者は、ICU入室後24時間以内の重症度は同程度もしくはより重症であったが、院内死亡率は15-40%程度低かった。今後さらなる国際的評価を行うことが望まれる。 -
発表資料
ファイル「2 大邉寛幸.pdf」
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お名前
内御堂 亮(うちみどう りょう) -
ご所属(施設名と部門名)
東京医科歯科大学病院 集中治療科 -
発表タイトル
ICUデータベースの活用法 -MITのやり方:人材育成や多職種コラボレーションの場として- -
抄録
Japanese Intensive care PAtient Database(JIPAD)は本邦初のICUナショナルデータベースとして2014年に運営が開始された。2022年には症例30万件、参加施設100施設に到達する見込みである。ナショナルデータベースとしては海外事例が先行しており、オーストラリア/ニュージランドのANZICS-APDや英国のICNAC-CMPはともに1990年代から運営されている。米国にはナショナルデータベースは存在しないが、MIMICやeICU-CRDなどのICUビッグデータベースがよく知られている。ナショナルデータベースは、ICU間のパフォーマンスを比較することを主な目的とするため定量的で標準化された測定値(患者基礎情報、重症度、死亡など)が収集されるが、MIMICやeICU-CRDはバイタルサインや輸液、血液検査値など実臨床で生まれるデータが経時的に収集されている点が特徴である。またこれらはオープンソース(無料で、一定の講習を受ければ誰でも使用可能)である。そのため世界中のデータサイエンティストに利用されており、頻繁に関連論文がデータサイエンス系の雑誌に掲載されることも特筆すべき点である。
「ビッグデータのAI解析」という文句をよく耳にするようになったが、「誰」が「どのように」行うかは明示されないことが多い。登壇者は、新たなAIアルゴリズムを作成し社会実装するには「多職種コラボレーション」と「チームビルディング」が必須であると考えている。これは登壇者が米国留学中に、MIMICを運営しているマサチューセッツ工科大学が主催する大学院生向けの授業を受講し、バックグラウンドの異なる学生チームでMIMICやeICU-CRDを教材としたデータ演習を行った経験から学んだ。本発表ではMIMICやeICU-CRDを紹介した後に、それらがなぜ/どのようにコラボレーション人材の育成に生かされているか、そしてDatathonなど日本でもすでに行われている試みについて紹介する。 -
発表資料
ファイル「3 内御堂亮.pptx」
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お名前
熊澤 淳史(くまざわ あつし) -
ご所属(施設名と部門名)
堺市⽴総合医療センター 集中治療科 -
発表タイトル
DPCデータを活用しよう -DPCデータ収集と利用について- -
抄録
日本集中治療医学会では2014年よりJIPAD(日本ICU患者データベース:JapaneseIntensive care PAtient Database)事業を開始し、集中治療室に入室した患者の疾病、重症度、入室経路、集中治療室での一部治療内容および患者転帰といった医療情報を収集してきた。本事業は収集したデータを用いて、施設間での診療実績の比較を行う事で医療の質の向上および集中治療医学の発展に貢献することを目的としている。しかし、JIPAD事業で収集するデータ(以下、JIPADデータ)には入院中の詳細な治療内容は含まれておらず、診療の質を評価する上で、プロセス指標の評価が困難であった。そこで、JIPAD事業では、厚生労働省臨床効果データベース整備事業の助成金を得て、DPCデータを収集するシステムの開発を開始した。DPCデータは診療報酬請求データであるが、入院中の診療内容も記録されており、診療プロセスを評価する事ができる。また、DPCデータはすべてのDPC病院が厚生労働省に提出しているものであり、個人情報の加工さえ施せば簡単に提出可能な状態のファイルとして各施設で保管されているため、各参加施設に収集のための負担をかけないというメリットがある。本発表では、これからJIPAD事業として開始するDPCデータ収集の詳細、各施設が参加するための手順等について紹介する。また、収集したDPCデータは参加施設でも利用可能となる予定であり、JIPADデータとDPCデータを用いて実施可能な研究の一例についても紹介する。 -
発表資料
ファイル「4 熊澤淳史.pdf」