

施設レポート(2016年度版)
アーカイブス
-
データ辞書Version2.0版 序文2018年
本辞書の第1版を上梓してから,はや5年の月日が流れました。この間に日本ICU患者データベース(JIPAD)は皆様の賛同を得て順調に成長してきました。これも皆様のご協力のお陰と感謝申し上げます。この5年間に本当に様々なことが行われてきました。その詳細についてはぜひ2018年2月に発行した2016年度の年次レポートをご参照下さい。力作の第2弾年次レポートです。これを可能としたのも昨年から発足したICU機能評価委員会の下部組織であるJIPADワーキンググループの皆様の力です。同時に厚生労働省からのデータベース事業交付金を得て本格的な運用に踏み出すこともできました。さらに2018年4月の診療報酬改定にも対応すべく重症度評価項目としてSOFAを加え,PICU委員会との相談の結果として小児の重症度としてはPIM3を採用するなどの機能を盛り込んだJIPAD3.0の開発を進めています。新しいJIPAD3.0はアラート機能の充実や,台帳機能としても使えるよう工夫されたExJIPADなど使い勝手のよいものになっておりますのでぜひご採用いただければと存じます。これらに伴い辞書もバージョン1.3から一気に3.0へと改定を行い,日本の現状にあわせつつ世界標準にもなりえる成人病名コード,小児病名コードを作成しました。 現在すでに50を超える施設においてJIPADへの症例登録が進められていますが,全国には800を超える集中治療施設が存在します。我々としては2018年現在300を超えてなお増え続けている日本集中治療医学会の認定する専門医研修施設全部の登録参加を当面の目標としたいと考えております。これが実現すればJIPADは世界でもトップレベルの重症患者レジストリになることは間違いありません。JIPADの設立目的は,本分野の臨床研究の向上でありますが,これによって我が国における重症患者管理の質の向上および医療資源の適正配分が可能になると期待されます。この目的を達成するために皆様のさらなる御協力をお願い申し上げる次第です。
2018年3月1日 日本集中治療医学会
ICU機能評価委員会,JIPADワーキンググループ リーダー
橋本 悟
-
データ辞書Version 1.0版 緒言2013年
Version 1.0版 緒言 我が国において集中治療管理を行うのにふさわしい専用の構造設備及び人員配置の基準が満たされている医療機関数(特定集中治療管理料算定可能機関数)は,2010年の時点で822施設を数え,過去6年間で150施設以上の増加となっている。各々の集中治療室の病床数は,1施設あたり平均約8床で,6-7床の医療機関が1/3を占める(2011年厚労省統計より)。しかもこれ以外に特定集中治療室管理料を算定していないICUは数多く存在すると思われる。このような事情から各ICUの診療成績には大きな差があることが考えられ,この重症患者管理施設の診療体制を放置すると,全体として診療成績が低下し,重症患者の予後の悪化と不要な医療費が増加することが危惧される。問題は診療プロセスと診療に関係した患者情報が個票として標準化されていないことに加えて,予後から見た診療機能評価が行われておらず,それらが診療報酬に反映されていないことである。 上記の問題を解決するための手段の一つとして,日本集中治療医学会では,我が国のICUに入室し管理を受けた患者についての多施設登録システムを開発し2014年1月より稼働させることとなった。このシステムにより,我が国の集中治療の客観的評価,参加施設間の差についての客観的指標(患者重症度と死亡率比較など)を得ることで,適切なベンチマークを提供することができよう。これらによって各施設における治療成績の向上が期待される。本システムにおいては,オストラリア・ニュージーランドにおけるANZICS-CORE (Australian and New Zealand Intensive Care Society, Centre for Outcome and Resource Evaluation)や英国におけるICNARC (Intensive Care National Audit and Research Centre)にならい,大規模臨床試験の基礎データとして活用することも可能なように柔軟に対応できるよう構築することを目指していきたい。
2013年12月1日 日本集中治療医学会
ICU機能評価委員会 委員長
橋本 悟